お役立ち情報営業時間終了後に「デリバリーのみ営業」をすると損をする?
2021年09月03日
時短営業を強いられる中、少しでも売上を稼げれば…」営業時間終了後にデリバリーのみ営業を実施されている方も少なくないと思われます。筆者の住む京都市内でも、閉店後にデリバリーのみ営業を行っている店舗を見かけます。
そこで一つ疑問が浮かびました。「果たして儲かっているのか?」と。
数字マニアの筆者と一緒に、以下の収益モデルケースを元にシミュレーションを行ってみましょう。
営業時間中の収益モデルケース
平均時給1,200円、人件費率30%、原価率30%の店舗の場合、 |
営業時間中の人時売上高及び人時生産性は以下のように算出されます。
人時売上高・・・一人一時間に稼ぐ売上高
人時売上高=平均時給÷人件費率 =1,200÷30%=4,000円 |
人時生産性・・・一人一時間当たり稼ぐ付加価値高
人時生産性=人時売上高―人時売上高×外部購入費率(ここでは原価率のみ) =4,000円―4,000円×30%=2,800円 |
人時売上高からF(原価)・L(人件費)を差し引いた利益は、一人一時間当たり1,600円になります。
FL差引後利益=人時生産性―人時売上高×人件費率 =2,800円―4,000円×30%=1,600円 |
これらを図で表すと、このようになります。
一人一時間当たり4,000円の売り上げを上げれば、1,600円のFL差引後の利益を得られます。
では、営業時間終了後、デリバリーのみ営業を行う場合も一人一時間当たり4,000円の売上高を上げれば、同様の利益を得られるか計算してみます。
ここで考慮しないといけないのが、包材費とデリバリー手数料です。
仮に売上に対する包材費率が3%、デリバリー手数料率が35%であった場合、以下のような利益計算となります。
※ここでは計算を簡略化するために、原価率は営業時間中と変わらないものとする。(一般的にはデリバリーの場合商品単価を上げるため、デリバリーの場合原価率は低くなる)
人時生産性・・・一人一時間当たり稼ぐ付加価値高
人時生産性=人時売上高―人時売上高×外部購入費率(原価率+包材費率+デリバリー手数料率) =4,000円―4,000円×(30%+3%+35%)=1,280円 |
人時生産性から人件費を差し引いた利益は、一人一時間当たり80円となります。
FL差引後利益=人時生産性―人時売上高×人件費率 =1,280円―4,000円×30%=80円 |
*Fには包材費及びデリバリー手数料を含んでいます。
これらを図で表すと、このようになります。
これでは、光熱費などのその他の費用を差し引くと、間違いなく赤字となります。
では、一人一時間当たりいくら売上を上げれば、営業時間中と同等の利益(つまりFL差引後利益1,600円)を得られるでしょうか。計算してみましょう。
必要人時売上高=(FL差引後利益+平均時給)÷{1―(原価率+包材費率+デリバリー手数料率)} =(1,600円+1,200円)÷{1-(30%+3%+35%)}=8,750円 |
つまり、営業時間中と同等の利益、FL差引後利益1,600円を上げるには、一人一時間当たり8,750円の売上高が必要となります。
例えば、デリバリーのみ営業を2人で回している場合は、1時間当たり17,000円の売上高が必要となり、単価が2,000円の場合、一時間当たり8.5件の注文が必要ということになります。
売上が少しでも上がればと、営業時間終了後にデリバリーのみ営業を行っている方、ご紹介した計算式活用いただき、損失が出ないよう価格設定の見直し、原価率の見直しなど、対策を打ってみてください。
またデリバリーのみ営業をこれから検討されている方は、シミュレーションをしてみてください。
次回は、デリバリーのみ営業の「時間帯別」実施の判断軸についてお伝えします。