飲食店の評価ノウハウ「ずっとこの店で働きたいと思えるキャリアパス」ノウハウ
飲食業における離職率は他業種と比較しても高い状況です。会社としては、現場経験を積みやっと店長を任せようと思っていた矢先に退職されると大きな痛手となります。
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入社3年ほどで退職する社員が多いため、どうにか対策を打ちたい
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今後自分はどのように成長していけばよいのか?という質問に歯切れの良い回答ができない
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社員に上を目指しながら、日々イキイキと働いてほしい
縁あって入社した社員が、ずっと働きたいと思えるキャリアパスの構築ノウハウについてお伝えします。
目次CONTENTS
01中小~零細企業における飲食業キャリアパスの制約条件を考える
全国にチェーン展開をする企業や数十店舗展開している企業であれば、大手企業が採用するキャリアパスのように、一般⇒店長代理⇒店長⇒エリア長⇒ブロック長⇒本部社員 というキャリアパスを用意することができますが、中小・零細企業では、そういった理想的なキャリアパスを用意することは叶いません。
企業としては、自社に在籍することで社員に対して働き甲斐や目標を持って働いてもらいたいとは思いますが、自分自身が次にどんな成長をすれば良いか明確に示すことができなければ、向上心のある社員は離れていってしまうでしょう。
まずは、中小~零細企業における飲食業キャリアパスの制約条件を考えてみましょう。
店長より上のポジションがすでに埋まっている
店長より上のポジションというと、例えばエリア長(エリアマネージャー)などが考えられますが、地域に根ざした企業の場合、エリア長というのはせいぜい2~3名いれば事足ります。2~3名のエリア長が3店舗ずつ管理すれば、それだけで10店舗近くの規模になります。
エリア長より上の役職というと、おそらく本部の部長クラスになるでしょうから、それもポジションとしては1名で十分です。
となると、エリア長の下にいる店長陣10名は上のエリア長が昇進するか、もしくは辞めない限り上にあがることはできません。
ここで店長は
- 昇進を目指して意欲的に頑張る
- 下からの突き上げも無いので安穏と自社に居続ける
- 退職する
の3つのキャリアを選ばなければなりません。
私が実際に支援している企業様では下からの突き上げも無いので安穏と自社に居続けることを選択している(本人の自覚は無くとも会社からの評価が)方が多いように感じます。
店長ポジションもすでに埋まっている
では、日々現場で働いている一般社員は店長を目指しているか、というと店長ポジションもなかなか空きがないことが多く、何を目指して良いかわからない状況に陥っています。
前述したエリア長を増やすには、下記の方法が考えられますが、コロナウイルスやオリンピック後の不況を鑑みるとどれも難しい方法となります。
- 出店数を増やす
- 本部社員を増員する
では、このような状況で社員がずっとこの店で働きたいと思えるキャリアパスはどんなものなのでしょうか。
02店長にならなくても、上を目指せる制度を用意する
2つ目は、のれん分け制度を導入し、社外から適切に流動させる ことです。
3つ目は、本部社員を増員することです。3つ目の本部社員を増員することについては、バックオフィス系でいうと人事・労務担当、総務担当、財務担当、などが考えられますが、現場一筋で活躍されてきた方からすると全くの畑違いの仕事になり、育成・習得には多大な時間を要するため、必要であれば、外部から経験者を獲得したほうが良いと考えます。逆に、出店開発、商品開発などであればうまく機能するでしょうが、エリア長や部長が担っているケースも多く、わざわざ専任ポジションを用意するまでもありません。教育が上手な社員については、本部付の教育トレーナーとして、活躍してもらうことも可能です。新店オープンの時期や新入社員が多く入社した際などに各店舗に派遣され、店舗のサービスレベルを向上させる役割を担っていただくことも可能です。
専門職やS級店長として活躍できるポジションを用意する
専門職といっても、特別な技術を持つ(持っているほうが良いのですが)、海外有名レストランでの経験がある、といったスペシャルな経験を求めるのではなく、自社のレシピについて早く・確実に実行することができ、人に教えることが上手、新たなレシピ提案などができるといった方を専門職として活用します。
店長として、売上の管理やアルバイトの面接などは担いませんが、自社の商品提供に関するレベルアップを担える方が専門職として活躍できるようなポジションを用意することで、店長ポジションが埋まっていたとしても上を目指すことができます。
調理に長けていることから、人手が足りない店舗へ臨時でヘルプに行ってもらうことも可能です。ヘルプ先の調理レベルを育成・指導することができれば、会社全体のサービスレベルもアップするでしょう。
給与については、会社の考え方にもよりますが、店長より少し低めに設定する企業が多いように感じます。
S級店長として、活躍できるポジションを用意することもポイントです。S級店長とは、旗艦店や大型店を任せられる、不採算店舗の立て直しができるなど、「店長」として高い能力値を持った方が進むことのできるポジションです。現場に身を置きつつ難易度の高い店舗を経験できることができるため、店長から見て、目指したい!と思えるポジションの一つです。
のれん分け制度を導入する
のれん分け制度とは、自社従業員に対して、店舗の商号の使用を許可することで、FCに似た展開をすることができる制度です。
FCとは違い、元社員が独立することになりますので、ブランドの毀損の確率が低く安心した多店舗展開を行うことが可能となります。
のれん分け制度を導入すれば、独立心の強い社員の目標のニーズにも応えることができますし、のれん分けができるキャリアにハードルを設けておけば、社員の勤続意欲も向上します。(例えば勤続7年以内に、副店長以上の経験を3年以上することなど)
03飲食店キャリアパス事例
ここまでの話をまとめたキャリアパスの事例を下記に記載します。
等級 | 本社 | 店舗本部 | 店舗 | 専門職 | のれん分け |
---|---|---|---|---|---|
7 | 本部長 | ||||
6 | 部長 | ブロック長 | |||
5 | 次長 | エリア長 | S級店長 | ||
4 | 課長 | 店長 | エキスパート | のれん分け利用可能者 | |
3 | 主任(トレーナー) | 副店長 | スペシャリスト | ||
2 | 一般職2 | スイングスタッフ | |||
1 | 一般職1 |
まとめ
飲食店業界は、一般的には業務の習熟度が早く、30代・40代以降のキャリアパスが描きづらい業界です。
キャリアパスを整備し、ずっとこの店で働きたいと思える環境づくりをしてみてください。
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