お役立ち情報魂は細部に宿る
2021年05月24日
いきなり質問ですが、“ブランドイメージ”というものは、どのようにできるかご存じでしょうか?
実は、お客様が見聞きしたことや実際の体験から受けた印象の積み重ねで出来ているのです。
プラスの印象が貯まれば、お客さまはその企業や商品・サービスに対して、ポジティブなブランドイメージを抱くようになります。
つまり、「あの店が好き」「あそこの商品が好き」といった感情が生まれ、購買につながったり、誰かにおすすめとして紹介してくれたりします。
逆にマイナスの印象がたまれば、お客様はその企業、商品・サービスに対して、マイナスのブランドイメージを抱くようになります。
つまり「買いたくない」「貴重な時間やお金を使いたくない」といった感情が生まれます。
当然購買は起きませんし、悪い場合は友人や家族に対して「あそこの商品は買わない方がいいよ」といったマイナスの口コミが共有されてしまったりもします。
いきなり何の話だ?と思われたかもしれませんが、今日は、私がフードデリバリーサービスでランチをオーダーした際の体験談から、きっとみなさんのヒントになるであろうお話しを書いてみようかなと思います。
順調に成長を続けているフードデリバリーサービス。
弊社がある京都市内でもUber Eatsや出前館、新興のfoodpandaなどの配達員が市内を走り回っており、コロナ禍で収益確保が難しい飲食店にとっては、売り上げ確保のためになくてはならないパートナーサービスとして定着した感があります。
とある休日出勤の土曜日、お昼を過ぎ、なにげなくUberEatsの料理の写真をスクロールさせていた際、カレールーばりにたっぷりとかかったタルタルソースが印象的なチキン南蛮の写真が目に留まりました。
お店の情報を見てみると、取り立てて評価が高いわけでも低いわけでもなく、中の中程度です。
「どうしようかなぁ」と迷いましたが、迷っている時間ももったいないのでとりあえずオーダーすることに。
料理はやや大きい長方形の紙製容器に入って届けていただきました。
受け取った瞬間は「大量にかけられたタルタルソースの油が染み出してこないだろうか・・」と少々不安を感じましたが、内側に汁漏れ防止の対策が施された容器を選択されていたので杞憂に終わりました。
これまでフードデリバリーでオーダーした際は、プラスティック製容器がほとんどだったので、紙製容器は逆に新鮮でした。また、環境に配慮した植物性由来の容器をチョイスしているという点で、環境問題にも気を配っているお店なんだなと一定の好感を持てます。
そして肝心の料理の味も相応に美味しかったです。
しかし、1つ大きな問題がありました。
それは、非常に食べにくかった・・という点でした。
オフィスからの注文だったため、カトラリーも合わせてオーダーしたのですが、付けて頂いたのは割りばしでした。
大きめの容器にカレールーよろしく、大量のタルタルソースをかけたチキン南蛮が盛り付けられていたのですが、容器の大きさ故にタルタルソースの大部分が容器底面にこぼれてしまい、これを割りばしで捕まえて口に運ぶのは非常に困難です。
何が言いたいのかというと、残念ながらこの商品はUX(顧客体験)の設計にまで、気を回せていなかったということです。
顧客体験とは、商品を通じてお客様が得る体験のことを指します。
この事例でいうと、スマホからチキン南蛮をオーダーして、それが私の胃袋に収まるまでの体験すべてを指しますが、商品そのものにフォーカスしたいので、UberEatsの提供するデリバリーサービス部分を除いた、純粋にチキン南蛮と私の間で生じる体験に絞った体験をUXとしましょう。
「長方形の紙製容器で大量のタルタルソースを楽しんでもらうなら、カトラリーはお箸よりスプーンの方が食べやすいだろうな」
「器は四隅がある長方形タイプより、ラウンド型の方が食べやすいだろうな」
そういったことをお客様視点で設計することが、商品を提供するお店には求められるのです。
なぜか?
冒頭でお伝えしたように、お店のブランドイメージは、料理の味だけではなく、その他の様々な体験から受ける印象の積み重ねだからです。
- 器の素材は何が適切か?
- 器の形状は料理が食べやすいか?
- 器のデザインは料理の雰囲気や価格帯とマッチしているか?
- 付属の紙ナプキンやおしぼりのデザインや使い心地はどうか?
こういったところまで一貫性をもって設計することが、お店のイメージの向上につながり、ひいてはファンやリピーターの獲得、ポジティブな口コミによる新規客の獲得につながるのです。
「料理の味には直接関係ない」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、お客様は料理だけでなく、すべての体験に対し、対価を支払い、その店を判断しているということを忘れてはいけません。
特にデリバリーにおいては、イメージの形成に大きな影響を持つ「スタッフの気持ち良い接客」や「店舗の雰囲気」といった重要な要素をお客様に体験していただくことができません。
かのスティーブ・ジョブズは、「魂は細部に宿る」という名言を遺されましたが、これは、どの業界のどんな仕事においても当てはまる教訓だということを意識して、この機会に自店の商品・サービスを見返していただければ幸いです。