お役立ち情報コロナ禍で急増したテイクアウト事業に見る失敗と成功(前編)
2020年11月06日
ギフト市場に学ぶ
いきなり私事ですが、「現役秘書が選ぶ 接待の手土産特集」といった雑誌が発売されると、すぐに飛びついて購入してしまいます。
もちろん自分用に商品を選ぶためではなく(頑張った自分へのご褒美を選ぶこともたまにありますが 笑)、お客様訪問時や会食時の“おもたせ”として、少しでも相手に喜んでもらえるものを見つけたいからです。
例えば、チョコレート。普段、自分が食べる分は、だいたい150~250円程度のチョコレートをコンビニで買います。それ以上の価格のものを買うことは、ほぼありません。
しかし、それが誰かへの贈り物や、頑張った自分へのご褒美となると金銭感覚のスイッチが切り替わり、だいたい3,000円程度のものをデパート等で選ぶことが多くなります。
これを読まれているみなさんの中にも、同じような感覚をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか?
一般的に自身の日常づかいには財布の紐が固くても、誰かへの贈り物、ご褒美となると緩みやすくなります。日常の消費行動では手に取ることがなくても、ギフトとなると、相手の喜んでくれる反応を期待して、ギフト商品の持つ付加価値にプレミア料金を支払うのです。
日常用Aとギフト用Bという商品の中身が同じだったとしても、コンセプトが変われば、ターゲット、売り方、販売チャネル、装丁、そして価格設定が変わります。
このように“ギフト市場”には、我々が理解しておくべき、様々なヒントや学びが隠れています。
多くの飲食店が陥ったテイクアウト事業の失敗要因
新型コロナ感染拡大防止に向けた自粛下において、飲食店の多くはテイクアウト事業に乗り出しました。
しかし、大半の飲食店が他店と代わり映えしない“お弁当”を並べるという失敗を犯してしまいました。
どこを見ても同じようなお弁当ばかりが並ぶので、消費者の選択基準がいつしか「価格」になってしまい、価格競争で飲食店同士の削り合いを促進するだけになってしまったところも少なくありません。
最初こそ「応援消費」に後押しされて盛況だったお店も、次々に淘汰されていったことは皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか。
この失敗は、コロナ前の繁盛店であっても多くの店が陥りました。
置き去りにされた顧客体験
前提として、飲食店は料理の味だけで勝負しているのではなく、お店の内装や照明、BGMからつくられる箱の雰囲気、感じの良い接客、会話を楽しみながらの美味しい食事といった、トータルな体験を売っていたし、お客様もその“顧客体験”に対価を支払っています。
この点に関しては、ほとんどの飲食関係者の方が理解されているところでしょう。
しかし、「テイクアウト事業」になった途端に大半の店舗が「から揚げ弁当 ●●円」「とんかつ弁当○○円」といった他店と同じラインアップで、顧客が価値を感じてくれていた“顧客体験”を置き去りにしてしまいました。
私自身、少しでも近隣の飲食店を応援したいという気持ちで、色々なお店で買い回りましたが、似たり寄ったりの“お弁当”ばかりの状況に飽きてしまい、この後にお話しする1店舗を除いて、リピート購入したお店はありません。
ある日の午前、飲食店が軒を連ねる通り沿いで、『本日分は完売しました』という張り紙がされた無人のテーブルを見つけました。
翌日以降も見ていると、同じ張り紙がされています。
毎日通る道でしたが、新型コロナ感染症が騒がれる前は、そこにどんなジャンルの飲食店があるのかさえ、目に留まっていませんでした。
そのお店(以降 A店)は、毎日午前中にテイクアウトのランチがすべて売り切れてしまうお店でした。
A店が取り扱うメニューは「天ぷら重 1,800円」の1種類のみ。
周辺店舗と比較しても強気の価格を設定しています。
業態は個人経営の天ぷら割烹ですが、ミシュランで星を獲っているとか、グルメサイトの口コミや評価が特別高いといった有名店ではありません。
こういっては失礼ですが、どこにでもありそうな普通の和食居酒屋といった雰囲気です。
しかし、隣接する飲食店がテイクアウト事業で大苦戦を強いられる中、このお店は確実にクリーンヒットを飛ばしつづけていました。
実際の商品を見て、理由はすぐに分かりました。商品コンセプトが周辺店舗と明らかに差異化されていたからです。