お役立ち情報飲食店店長のための「生産性」講座①
2020年12月04日
店長の皆さん、最近「生産性」というキーワードをよく耳にされると思います。
では、この「生産性」正しく理解できていますでしょうか?
「あなたのお店の生産性はどれくらいですか?」
に対して、どうお答えになりますか?
私は、これまで多くの飲食店店長に対して、研修をして参りましたがこの「生産性」というキーワードに対しては、まだまだ理解が進んでいないように思えます。
その理由の一つは、生産性の捉え方が色々あるということでしょう。
まず、外食産業の生産性を見てみます。
産業別の生産性(2018年度)
産業別の生産性を見ると、下記のように「就業1時間あたり」もしくは「就業1人あたり」での表されています。
出所: 日本生産性本部 「主要産業の労働生産性水準」
(https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/f0b1c3b456fe8df5c4f005433755c7f2.pdf)
産業別にみると、不動産業や電気・ガス・水道、情報通信業、金融・保険業といった資本集約的な分野で労働生産性が高くなっています。
一方で、農林水産業やその他のサービス業、宿泊・飲食サービス業など比較的多くの人手を必要とする分野で相対的に低くなっています。就業1時間あたり・就業者1人あたりのいずれの指標でみても、こうした傾向がみられるわけです。
産業別 名目労働生産性
つまり、宿泊・飲食サービス業は、1人が1時間働いたら、付加価値(ほぼ粗利益と捉えても良いでしょう)2,657円を稼いでいる。あるいは、1人で年間318万円の付加価値を稼いでいると言えるわけです。ここでは、売上ではないことに注意です。
産業別の労働生産性の表を見てお感じになったように、飲食業の労働生産性は、他産業に比べて非常に低水準となっているわけです。
飲食店スタッフのAさんが、1時間働いて2700円の粗利(売上ではない)を稼いだとして、そのAさんに時給3000円なんて当然払えるわけがないのです。
この2700円の内から、人件費はもちろん、家賃や光熱費などの経費を支払っていかなくてならないわけです。
つまり、生産性が高いほど、お支払いできる賃金も高くなるわけです。
飲食業界の賃金水準が低迷しているのも、生産性が低いのが理由です。
後ほどご紹介しますが、1時間でいくらの粗利を稼ぐかという指標を、
人時生産性(にんじせいさんせい)
と言います。
この指標が、一番わかりやすくて、正確な指標となりますので覚えておきましょう!
飲食業における生産性の高い業態は??
先ほど、飲食サービス業は、他産業に比べて生産性が低いことをお伝えしました。
しかし、飲食業においても、高級レストランから、ラーメン屋、居酒屋など業態は様々です。
業態ごとに生産性を比較した表が以下のものになります。
引用:令和元年 TKC経営指標
また、先ほどと異なる様々な指標が出てきました。
ちなみに各指標の意味は、
労働分配率 | 付加価値のうち、人件費がどれくらい占めているかの割合です 労働分配率=人件費÷付加価値 |
1人当り売上高 | 1年間の売上高を従業員数で割った数字です |
1人当り限界利益 | 限界利益=売上ー変動費 もしくは 限界利益=固定費+利益 1年間の限界利益を従業員数で割った数字です |
1人当り人件費 | 1年間の人件費を従業員数で割った数字です |
私は先ほどお伝えした人時生産性で見れば良いと思いますので、これらの指標は、こういうものがあるんだ、という程度で構いません。いずれにしても、飲食業内における生産性の比較は、こちらの表でわかります。
やはり客単価の高い業態が、生産性が高く、賃金も高いことがわかりますね。
飲食業においては、客単価の高い業態が、稼ぎやすい業態であることがわかります。
今回のお伝えしたポイント
- 飲食業の生産性は、他産業に比べて非常に低い
- 飲食業の中では、客単価の高い業態が、生産性が高い
- 生産性が高いほど、賃金水準も高めることが可能
- 生産性の指標は様々あるが、「人時生産性(一時間あたりいくらの付加価値を稼いだか)」を抑えておく