お役立ち情報コロナ禍で強さが光る 大手焼き鳥チェーン「大吉」の勝ち方に学ぶ
2021年02月05日
先日放送のテレビ東京系「ガイアの夜明け」で、コロナ禍でも強い飲食店として大手焼き鳥チェーンの「大吉」(ダイキチシステム株式会社・本社 大阪・1978年第1号店出店)が紹介されていました。
「大吉」の店舗数は640店(1月放送時点)。あの「鳥貴族」(622店舗・2020年12月末時点)をもしのぐ、店舗数日本一の焼き鳥チェーンです。
番組で紹介されていた大吉の店主は、「昨春の緊急事態宣言が明けてからは客足が順調に回復し、秋には前年同時期を上回る売上をあげることができた」と仰っていました。
しかし、店舗数で拮抗する焼き鳥チェーンの鳥貴族は逆に苦戦しています。
コロナ禍で売り上げが大幅に減少したことも大きく影響し、2020年7月期の決算では2期連続の赤字決算を発表しました。
大手居酒屋チェーンのワタミにおいては、居酒屋など全店の2割に当たる114店舗を2021年3月末までに閉店すると発表しています。
駅前や都心の好立地に出店することで、仕事帰りのサラリーマン・OLの「軽く飲んで帰るか」需要を取り込めていた居酒屋チェーンは、在宅勤務の普及による人手の減少をまともに受け、不振にあえぎ続けています。
しかし、こんな時期にあっても「大吉」の店舗の多くは、賑わいを維持し続けています。
他の大手チェーンが大苦戦を強いられる中、なぜ「大吉」は輝きを失わずにいられるのでしょうか。
その理由は、独自の出店戦略と差別化戦略にありました。
店舗数で拮抗する鳥貴族の主な出店場所は、都市部を中心とする駅前の好立地です。
対する大吉は、駅前どころか駅近とも言えない、駅から程遠い住宅街を狙って出店を行っています。
駅から徒歩15分、20分という立地も珍しくありません。
競合ひしめく駅前の好立地やオフィス街近くをあえて避け、“戦わずして勝てる場所”に狙いを定めた立地戦略が功を奏しました。
コロナによる在宅勤務の普及の影響は逆風どころか、むしろ追い風ともいえるでしょう。
店舗サイズにも業績好調をけん引する理由があります。
大吉の標準的な店舗サイズは10坪20席程度。コンパクトなので、夫婦や親子だけで切り盛りすることで、人件費を抑えることが可能です。
また、駅前立地と違って賃料を安く抑えることができるので、1日の売上が5万円あれば、利益をあげられるのです。
そこそこの売り上げでも確実に利益を生み出す収益モデルを実践し、日本一の焼き鳥チェーンに成長しているのですから、お見事としか言いようがありません。
さらに、大吉の「差別化戦略」にも強さの理由があります。
マーケティングにおける差別化戦略では、
・手軽
・品質重視
・密着
の3つの切り口があります。
「手軽」とは、早い・安い・うまいに代表されるファストフード、
「品質重視」は、味や雰囲気で勝負する寿司店や割烹料理店、
「密着」は、味はそこそこだけども店員とお客様の距離が近く、多くの常連客で賑わうお店
をイメージしてもらえば分かりやすいでしょう。
大切なのは、この3つのどれかの切り口に沿って、メニュー、価格、店の雰囲気、味、接客・サービス等の“一貫性”を持たせるということです。
繁盛しているお店は、この一貫性が保たれていることが共通しています。
もちろん、大吉も例外ではなく、「密着」軸で一貫しています。
コンパクトな店内は、カウンター内の焼き場から常にお客様の様子を伺うことができるので、お客様の食べるペースに合わせて料理を最高の状態で提供可能です。
また、お客様との物理的な距離も近いため、コミュニケーションも活発に行われます。
店主とお客様が頻繁に会話を交わすことで、お客様にとってもリピートしやすいお店になり、自然と常連客が増えていきます。
また、住宅街なので周辺に競合するお店があまりありません。
すると、いつしかお客様同士が自然と顔なじみとなり、お客様同士のコミュニケーションが生まれます。こうなると、誰かと会話することを目的に、週に何度も通ってくれるロイヤル顧客が誕生していくのです。
大吉は、こうした常連客に支えられることで、コロナ禍でも賑わいを失わずにいられるのです。
・あえて駅前を避けた「独自の出店戦略」
・お店とお客様、そしてお客様同士の距離感が近い「密着軸」
大吉の強さはこの両輪にありました。
強い飲食店の戦略には、必ず多くの学びがあります。
ぜひ、みなさんも繁盛しているお店の戦略から、自店に活かせるヒントを探ってみてください。