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飲食店の運営ノウハウ成功する社員独立制度(のれん分け)ノウハウ

成功する社員独立制度(のれん分け)ノウハウ

飲食業の厳しい環境下においても、採用力・定着力・収益力を高めることができる生き残り戦略として、社員独立(のれん分け)制度を紹介

近年「のれん分け(社員独立)制度をつくりたい」といったご相談が多くなりつつあり、優秀な人材の採用・定着のためというのが、その主な理由となっております。

しかしながら、以下のようなお悩みも聞くところです。

  • どんな社員をのれん分け(独立)社員とすべきか、どういった基準にすれば良いかわからない

  • 今までも試みたことがあったが、次に続く独立社員が現れなかった(立候補がなかった)

  • 社員にとっても、のれん分け(独立)は、成功するかどうか不安があるようだ

  • のれん分けに関する社員の費用はどうすればよいか

ここでは、のれん分け(社員独立)制度を成功させるノウハウについてお伝えします。

目次CONTENTS

01のれん分け制度の導入の再考

結論からお伝えすると、のれん分け(社員独立支援)制度の導入は、採用力&定着率アップに向けての大きな力になります。また、人件費等のコストがなくなり、結果、本部の収益(CF)、財務体質が改善しています。

具体的なメリットとして、以下の点が考えられます。

  1. 飲食業で務める社員の年収は、店長で年収350~500万円程度で頭打ちになることが多く、それ以上のポストに関しては狭き門であること(最近では、出店計画も消極的なチェーン店も多いことから複数店マネジメントのポストの空が見込みにくい)。
    その点、のれん分けオーナーとしてのキャリアを築くことで、年収1000万円以上も可能となり、社員にとっての夢や目標ともなり、社員満足度(定着率)の向上にも資することが挙げられます。
  2. 店舗スタッフの人材採用がますます厳しくなる中、本部主導の採用活動、コスト負担ではなく、のれん分けオーナーに責任をもって集めてもらい、店舗運営してもらうことで、本部の採用・教育コストの負担がなくなり、ロイヤリティ収入などで効率的に稼ぐことができる点です。
  3. 独立支援制度を設けている企業専用の採用サイトに掲載でき、その結果、採用力が高まる傾向にあること。ただし前提条件としては、繁盛店であり、その看板とノウハウに価値があると思われる必要があるでしょう。
  4. 後継者がおらず、事業承継の形として、社員にのれん分けという形で譲渡し、ハッピーリタイアの策にもなることが挙げられます。
    以上のような観点から、社員独立制度(のれん分け)の導入は、前向きに考える余地は大きそうです。

02のれん分け制度の注意点

一番気をつけなければならないことは、会社都合(自利中心)の制度にせず、あくまでも社員の成功を第一の目的とすることです。

しかしながら、よくありがちなケースとして、赤字(収益の悪い)店舗を、そのまま当該店舗の店長(言ってみれば評価・能力の低い店長)にオーナーをさせてしまっていることが見受けられます。

そのようなケースの行きつく先は、そのオーナーも結局、店舗改善できず、疲弊し、辞めてしまう(最悪は逃げてしまう)事態となり、その後は店舗状況が悪くなった店舗を直営として引き取ることになってしまいます。
一度、そのようなケースを作ってしまうと、誰ものれん分けオーナーになりたいという社員もいなくなってしまうだけでなく、会社のブランドイメージも毀損してしまいます。
となれば、のれん分け店で多く出店し、店舗拡大していけるような「成功する」のれん分け制度をつくるには「いかに、のれん分けオーナーに成功してもらうか!(とくに一人目は成功させる)」ここが最大のポイントとなってきます。

ここで、のれん分けオーナー資格を与える「適格性基準づくり」が必要となってくるわけです。

優秀社員をのれん分けオーナーとしていくのが筋となるわけですが、優秀社員(店長)をのれん分けで独立させると、本社(直営)の力が落ちるといった経営者の悩みがあるところです。
これに関しては、のれん分けオーナーとして独立させると同時に、本部の役員として入ってもらうことで一緒に「のれん分け制度による拡大」をサポートしてもらえれば良いと考えます。
当然、そのようなオーナーにとっては、ダブルインカム(2つの収入)にもなります。

03成功するのれん分け制度のポイント

【事例1】ココイチ(㈱壱番屋「カレーハウス CoCo壱番屋」)のケース

国内だけでなく、海外にも進出し、1400店舗以上を展開しています。世界一のカレーチェーン店として2013年にギネス認定もされています。

この店舗展開力は、「ブルームシステム」と呼ばれる独立支援制度にあります(「ブルーム」とは「開花する」という意味を持ち、「まだつぼみである社員に早く一人前の経営者となって開花して欲しい」という想いからの名称のようです)。これまでに500人以上が独立し、成功している独立支援制度といえるでしょう。

主な制度のポイントとしては、

入社時

  1. 業界未経験者であっても、独立候補社員として入社できる(独立に向けての説明会実施。独立候補社員のキャリアパスがある)

入社後

  1. 9段階のステップによる独自の人事考課制度があり等級基準をクリアすること(概ね5~6年で独立ができる)。
  2. 最低200万円の貯金(入社時は貯蓄ゼロでも可。独立を申請する際には、預金通帳のコピーが必要)などの条件をクリアすること。

独立時

  1. 資金調達については、会社の債務保証制度があること(物的担保は不要)。
  2. 物件選択や市場調査を踏まえての物件情報供与がある。
  3. 店舗建築(作業効率を考えたレイアウトなど、ノウハウ導入)から開店準備支援と全面的に本部がフォローする。

これらが整備されていればオーナーは安心して開店の準備に取り組むことができます。

独立後

  1. 独立後の本部に支払うランニングコストであるロイヤルティはありません。
  2. 食材から備品に至るまで、壱番屋で購入でき、本部が一括購入することで低価格での仕入れが可能。
  3. また商品品質面も、カレーソースは、レトルトカレーの製造工場として世界一の規模を持つセントラルキッチンで製造(衛生管理の徹底により、安心・安全な体制をとっている)。
  4. 開店2日間は本社メンバーのヘルプがあること。
  5. 独立後も、SV(スーパーバイザー)の強化などで成功に向けてのサポート体制を築いていること。
  6. 壱番屋のネットワークを通して、独立したオーナー同士で情報交換・共有の場を提供していること(メール通信・オーナー会議・社長意見交換会など)。
  7. 各エリア単位で行われるオーナー会議を開催し、各店の課題を全員で共有しともに解決策を検討する機会があること(各店ではじめた販売促進の手法を会議でのコミュニケーションでブラッシュアップし、エリア全体のノウハウに高め、大きな成果を収めた実績も)。
  8. 壱番屋チェーンならではのスケールを生かした販売促進広告、求人広告、広報活動を展開し、ブランド価値の向上を図っていること。

このような仕組みがあるので、のれん分けオーナーの複数店舗経営者はオーナー全体の3割超えており、独立支援制度がオーナーが成功しやすい制度となっていることが伺えます。

【事例2】のれん分け制度によって急速に拡大したラーメンチェーン「来来亭」のケース

「来来亭」は、滋賀県に本部を構え、全国で150店舗以上展開するラーメンチェーンです。

来来亭のHPには、のれん分けオーナーに向けてのロードマップ(店長への道)が分かりやすく描かれており、そこには店長の給料が50万円~、のれん分けオーナーは年収1,000万円~と求職者を動機付けするインパクトは充分です。

これにより、

  1. やる気(「独立したい」)のある社員を採用する。
  2. 直営店が繁盛する。
  3. 繁盛店で育った人材は独立する。
  4. 独立した先輩を見て、他の社員は更にやる気になる。

という1⇒4のスパイラルにより直営店の業績が伸びる仕組みを作りました。

のれん分けオーナーまでの、ロードマップとしては、下記の通りです。

  1. 洗い場
    (28万円~) 入社後の最初の仕事。
  2. ホール
    (29.5万円~) 入社後2週間後~
  3. 仕込み
    (30万円~) 入社1ヵ月~(半年かかるスタッフもいる)
  4. チャーハン&麺場
    (32万円~)
  5. 教育担当
    (35万円~) 最速6ヶ月でチャンスが 巡ってくることもある
    スタッフ教育、発注、清掃など、店舗運営に関わるすべての業務を行う。また、ムードメーカーとして、スタッフを盛り上げるリーダーシップも不可欠。
  6. 店長
    (50万~70万円) 最速入社1年で抜擢のチャンスが巡ってくるもある。
    ★店長になれば、そこは自分が独立するための店舗となります(異動はなし)
  7. 独立
    (年収1,000万円~)最短で2年間の店長を経て独立へ
    ★店舗取得費用=税引前利益の15か月分
    ★ロイヤリティ0
    ★食材マージン0

独立後は更に複数の店舗を持つオーナーを目指す。
特徴的なのは、上記のように、仕事を習得していく都度(随時)、昇給していく仕組みです。これによって、スピード感ある昇給が可能となるので成長スピードとモチベーションのアップに繋がります。

また、経営理念の一つに「独立へのあらゆるノウハウを取得できる店舗を作り上げる!」とあり、その経営理念は、毎朝朝礼で唱和されています。
実際に、ノウハウ取得のために「店舗未来会議」という仕組みがあります。

店舗未来会議は1ヵ月に1度。 西は福岡、東は神奈川から滋賀県野洲市の本社に来来亭全店長が集まり、新商品情報、スタッフ教育のあり方、失敗からの教訓など、共有された知識・経験は、確実に蓄積されていきます。

04社員は独立したいが、自信がない。その不安を解消する対策とは

これまでのれん分け制度導入の経営上の意義・メリットが大きいこと、および成功しているのれん分け制度を紹介して参りました。

最近では、経営者様より「独立志向の若者が少なくなった」という声を聞くケースが多くなったのは確かですが、私の見解としては、「独立はしたい」が「自信がない」というのが実際のところだと感じています。要するに、単に経営者が「うちは独立制度があるから」ということだけでは、なかなか手が上がらないということになります。

社員の独立に向けての大きな不安材料は以下の点に集約されます。

  1. 資金面
  2. 独立して成功するイメージの薄さ
  3. 独立希望者が、自身の経営者能力(適格性)に懐疑的
  4. 開業後の支援内容

それぞれの不安の解消に向けての基本対策

  1. 資金面への対策
    ・ 自己資金で最低でも2~300万用意が前提(経営者としての覚悟を持つことにも繋がる)
    ・ その上で、それを超える部分については会社が「債務保証」
  2. 独立して成功するイメージの薄さ
    ・ 既存の直営店(黒字店舗)の売却
    ※ 売却金額は帳簿価格+利益額○年分。またリースも考えられる
    ・ 何よりも会社として、成功させる。成功例をつくることが大事
  3. 独立希望者が、自身の経営者能力(適格性)に懐疑的
    ・適格性(審査)基準を透明にする
    例えば、【ⅰ】店長歴3年以上(入社5年目安) 【ⅱ】5等級以上 【ⅲ】2期連続B評価(上から2番目)以上 【ⅳ】会社への貢献度(本部が経営者として適格と認めたもの) 【ⅴ】後継者を残す 【ⅵ】年間独立者1名と、当初から明らかにしておく
    ・ 経営力を習得させるべく、企業経営教育(経理、資金繰り、労務管理等)を実施する
    ★これらの点から、キャリアパスを含め、人事評価制度、教育プログラムの整備は前提となります。
  4. 開業後の支援内容
    ・ 商品開発や、食材等の供給支援、広報・宣伝支援、経営指導、相談等のサポート体制を整備しておく

以上のような、基本対策をしっかりと明文化し、制度内容として告知しておく必要があります。

05のれん分け社員が希望額面通りの資金調達をするには

社員の独立に向けての大きな不安材料の一つとして、資金面に対する不安がありますが、その不安の解消に向けての基本対策として、

  1. 自己資金で最低でも2~300万用意させることや
  2. それを超える部分については会社が「債務保証」する

というような策をお伝えしてきました。

独立者が、例えば日本政策金融公庫で希望どおりの資金調達を望むのであれば、いくつかのポイントがあります。

  1. 働いた経験がある
    ・当初の目標月商の達成割合は、「経験あり」の方が「経験なし」よりも2倍近く高い (「日本政策金融公庫」調べ)ことから、のれん分け制度による独立社員はこの点クリアしていくでしょう。
  2. 以前の勤務先や取引先と良好な関係にある。
    ・以前の取引先等の支援がある場合、目標月商達成率が高い(「日本政策金融公庫」調べ)ことから、やはりのれん分け制度による独立や、その後の経営サポートが充実していることはプラスに働きます。
  3. 社長がお店の運営や経営知識(税務や労務含む)を持っている。
    ・中小企業や個人への融資は、社長への融資そのものであり、社長がしっかりしている必要があります。よって、独立社員向けの経営力を身につけさせる教育プログラムが求められます。
  4. 事業計画書がしっかりしている。
    ・これから事業を行うのであれば、事業計画書でしか判断できないためであり、この事業計画書作成へのサポートもしていく必要があるでしょう。

まとめ

ここでは、のれん分け(社員独立)制度の導入に向けての主なノウハウをお伝えしてきました。他にも、のれん分け制度導入に向けて、より実務的かつ具体的に検討しなければならない点として

  • のれん分けの投資額が大きい場合の資金調達
  • のれん分け加盟候補者に対して、説明義務がある項目
  • のれん分け制度の導入ステップと独立後

といったことを検討しなければなりません。そのあたりについての解説は、
小冊子「のれん分け(社員独立支援)制度 導入マニュアル
にまとめておりますので、是非、ダウンロードしてご参考にしていただけたらと思います。

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ますます厳しくなる人材採用難、そして求められる残業抑制、生産性(収益力)向上等、店舗経営企業を取り巻く外部環境はますます厳しくなりつつあります。 この厳しい環境下においても、採用力・定着力・収益力を高めることができる店舗経営企業の生き残り戦略として、社員独立(のれん分け)制度をご提案いたします。