飲食店の教育ノウハウ失敗させない!飲食業のクレド経営ノウハウ③
(クレド浸透編)
「クレドが出来たから一安心」で終わってしまっていませんか?
クレドは、従業員が行動に移すことで初めて価値を発揮するものです。
つまり、「作って終わり」ではなく、「作ってからが始まり」です。
そのためにも、従業員にクレドを浸透させ、実践を引き出すことが経営者にとっての最重要課題と言えます。
ここからは、クレドの浸透について、弊社が行っている作成手順をできるだけ具体的に紹介していきたいと思います。
目次CONTENTS
01クレド浸透施策のご紹介
まずはクレドの浸透施策にはどういったものがあるのか、例をご紹介しましょう。
・クレドカード、小冊子の配布
・職場内で従業員の目にとまりやすい場所への掲出
・朝礼や全社会議等、従業員が集まる場での唱和、スピーチ、説明
・名刺やショップカード等への印刷
・Webサイト、SNSでの発信
・入社時の説明
・人事評価制度に評価項目の一つとして導入 等
それぞれについて、具体的にどういったものか簡単にご紹介していきます。
クレドカード、小冊子の配布
名刺サイズの蛇腹型カードや携帯しやすいサイズの小冊子を作成し、従業員の方に配布する手法です。クレド経営のお手本として有名な「ザ・リッツ・カールトン」が採用していることから、最も広く普及している手法だと考えられます。
クレドカードに使用する素材は、上質感と丈夫さを兼ね備えた素材、厚さをチョイスすることがポイントです。
従業員が日々携帯し、確認するものなので、すぐにボロボロになってみすぼらしくなってしまうような薄い紙などは避けましょう。
SDGsに取り組んでいる飲食業であれば、原料の約6割が石灰石で出来た新素材「LIMEX(ライメックス)」(株式会社TBM)を選択することも、会社の目指す方向性を印象付けるのに一役買ってくれるかも知れません。
※回し者ではありません
職場内で従業員の目にとまりやすい場所への掲出
クレドをポスターなどにし、社内やスタッフルーム等、従業員の目につきやすい場所に掲出することで、クレドの認知向上、刷り込み効果による浸透を狙った施策です。
朝礼や全社会議等、従業員が集まる場での唱和、スピーチ、説明
朝礼等でクレドの内容をみんなで唱和したり、クレドの一つについて、当番制でスピーチしたりといった取り組みです。
前述のリッツカールトンも朝礼でスピーチを行っているそうです。
ちなみに、弊社も「行動指針」にまつわるエピソードについて、朝礼当番による3分間スピーチを行っていました。
名刺やショップカード等への印刷
従業員が携帯する社内向けのクレドカードとは逆で、お客様に配布するツールにクレドを掲載する手法です。
外部に向けてあえて自社の取り組みを宣言することで、従業員にクレドの実践を促すという狙いがあります。
Webサイト、SNSでの発信
こちらは名刺やショップカードのオンライン版と考えると分かりやすいでしょう。
来店してくれたお客様や直接お会いした方にお渡しするショップカードや名刺とは異なり、自社のクレドをすべてのステイクホルダーに広く宣言することが可能になります。
これにより、従業員の意識・行動変革を促すだけでなく、企業イメージの向上や採用活動へのプラス効果を期待するといった狙いがあります。
例:
ザ・リッツ・カールトン「ゴールドスタンダード」
https://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards
スターバックス ジャパン「Our Mission and Values」
https://www.starbucks.co.jp/company/mission.html?nid=mm
入社時の説明
クレドは全従業員に認知・理解され、実践されるべきものです。
当然、新しく入社・入店される方々にもきちんと説明の場を設け、クレドの内容や目的を理解してもらう必要があります。
決して、クレドカードや小冊子を「渡して終わり」で済ませてはいけません。
「理解」がなければ、「実践」は生まれないということを忘れないようにしましょう。
人事評価制度に評価項目の一つとして導入
クレドの実践を促す目的で、「実践度合い」を人事評価に取り入れる企業も珍しくありません。
例えば、期首の目標設定時に「今期はクレドの内容に沿って、どのような行動を心掛け、実践するか」といったことを従業員にコミットしてもらい、期末にその目標をどの程度達成できたかを評価するといった形式です。
この手法の良いところは、クレドの実践を促す動機付けになることはもちろん、従業員がクレドを再確認し、クレドに沿った行動について、考えるきっかけを与えることが出来る点にあると言えます。
02クレド浸透で失敗しないために注意すべきこと
クレドを導入している飲食業・飲食運営企業では、クレドカードを従業員に配布し、毎日の朝礼で唱和しているところも少なくないでしょう。
また、ポスターにして掲出しているところも多いかと思います。
しかし、よくある浸透施策は、実はよくある失敗例にもなります。
「クレドカードをパート・アルバイト含む全従業員に配布した」
「ポスターは従業員の目に触れやすい、色々な場所に掲出している」
「クレドを朝礼で毎日唱和している。嬉しいことにみんな完璧に覚えてくれている」
「だけど・・・・。」
という経営者も多いのではないでしょうか。
決して、上述した浸透施策自体が悪いわけではありません。
ただ、クレドカードを携帯し、いつでも、どこでも、確認できることと実際に行動に移せるかは全く別のお話しです。
暗唱できるようになったからといって、実践できるかというのも別のお話しです。
「カードは常時携帯を義務付けている」
「ポスターはたくさん掲出している」
「毎日暗唱している」
という「放置的」「儀式的」な施策だけに終始すると、かえって従業員の思考停止を招き、クレドの形骸化を招く可能性も否定できません。
「クレドは作ったけれど、従業員の行動はこれまでと何も変わらない」という会社やお店は、「実践を引き出すための仕組み」が疎かになってしまっていないか、見直してみてください。
「実践を引き出すための仕組み」とは、クレドに沿った行動を思考し、その考えを行動に移そうという「やる気」を引き出す仕組みのことです。
弊社では、従業員の実践を引き出すために
クレドの理解 ⇒ クレドへの共感 ⇒ 行動イメージの具体化 ⇒ 実践 ⇒ 成果
という流れに沿い、段階に応じた浸透策を展開しています。
浸透を図っていく上でのポイントは、従業員へのクレド浸透レベルがどの段階にあるかを見極め、その段階に応じた浸透施策を講じるということです。
浸透レベルと浸透施策にズレがあると、状況は一向に好転しません。
03クレド浸透のSTEP
ここからは、クレド浸透過程における5つの段階と、よく見られる失敗状態、そして、段階に応じて講じるべき打ち手の方向性について、ご紹介していきます。
以下を参考に浸透を図っていくことで、きっと新たなステージが切り開かれることでしょう。
<クレド浸透レベル>
・Level.1 理解:(従業員は)クレドの内容や言葉の意味を理解している
・Level.2 共感:(従業員は)クレドに共感し、自身も取り組みへの意欲を持っている
この段階で留まって次の段階に進まない、もしくはこの段階にも達していない、という状態でよく見受けられるのは、以下のような状態です。
・企業理念やクレドの「存在」自体を認識していない従業員がいる
・(クレドの)存在は知っているが、内容までは知らない
・内容は理解しているが、従業員の「共感」獲得にまでは至っていない
これらは、従業員とクレドの「タッチポイント(接点)の少なさ」や「クレド自体が分かりにくい」という状態が考えられ、打ち手は以下の方向性で取り組むと良いでしょう。
<浸透策の方向性>
・企業理念やクレドを目にする機会を増やす (タッチポイントをつくる・増やす)
・内容、ボリューム、体裁自体を見直す
<クレド浸透レベル>
・Level.3 具体化:(従業員は)具体的に何をするべきか、行動イメージを持てている
・Level.4 実践:(従業員は)クレドとリンクする行動を実践している
この段階で留まって次の段階に進まない、という状態でよく見受けられるのは、以下のような状態です。
・企業理念・クレドに共感しているが、具体的にどう行動に移したら良いか分からない
・企業理念・クレドに共感し、行動イメージも持っているが、行動に移せていない
これらは「行動イメージを掴めていない」、もしくはイメージしている「行動がクレドと合致していないのではないか」という迷いや、行動を起こすことへの躊躇がある状態です。
打ち手としては以下の方向性で取り組むと良いでしょう。
<浸透策の方向性>
・企業理念やクレドとリンクする具体的な行動事例を提示する
・実践を評価する取組みを導入する
「実践を評価する取組み」とは、例えば前述の人事評価への反映や、いわゆる「サンクスカード」の導入といったものが考えられます。
サンクスカードを簡単に説明すると、働く仲間同士でお互いの行動を褒めあったり、感謝を伝えるために手渡すカードのことです。
リッツカールトンやスターバックス、オリエンタルランドをはじめ、様々な企業で導入されています。
スターバックスでは「GREEN APRON CARD」と呼ばれ、クレドに合致したサービスや振る舞いを実践している同僚に、感謝の気持ちをカードで贈っています。
サンクスカードを受け取る側は、自身の行動が認められることで、自信と次のアクションを踏み出すモチベーションが高まりますし、手渡す側も同僚の良い行動に着目することで、自身の行動変革につながる上、感謝を言葉にして伝える過程で表現力や論理的思考力が鍛えられるといったメリットがあります。
<クレド浸透レベル>
・Level.5 成果:(従業員は)実践したことが成果となり、手応えを感じている
それぞれの従業員が主体的に考えて行動できる上、顧客満足度の高いサービスを提供できている状態です。
やることやることが次々に成果を上げだすと、そのお店で働くことが楽しくて仕方なくなり、さらに上のサービス品質を目指して、次々とアクションアイディアが沸いてくるようになります。
<浸透策の方向性>
すでにクレドが充分に機能しているので、新規採用者を含めた定期的な浸透度合いの確認、さらに一つ上の高みを目指す目的でのクレド改訂等、飲食業界No.1の顧客満足度を目指して、全社でレベルアップ活動に取り組んでみると良いでしょう。
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
クレドの浸透は、現在のクレド浸透レベルに応じて打ち手を講じることがポイントです。
方向性を間違わなければ、有効な打ち手はたくさんあると思いますので、試行錯誤を繰り返しながら自社に合うものを見つけてください。
あせらずに、PDCAを繰り返せば、きっと良い結果が出るでしょう。
それでも浸透にお困りの飲食業、飲食店運営企業様がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。