飲食店の教育ノウハウ簡単にできる!「日次決算作成」ノウハウ
店長の数字に対する意識を高めるために、有用な方法として挙げられるのが、日次決算の作成・管理です。
ただ日次決算というとなかなか手間がかかり、運用も大変だと認識されているのではないでしょうか。
ここでは、できるだけ手間をかけずに、エクセルに売上・仕入・水光熱メーターを入力するだけで、店舗別の日次予算が作成できる方法をご紹介します。
目次CONTENTS
01日次決算に必要な要素とは何か?
まず日次決算を行う目的を整理していきましょう。
・店長の数字に対する意識を高めること
・店舗の数字を日次でチェックし、課題を見つけること
主な目的はこの2点です。
日次決算を行うには、毎日数字を入力する必要がありますが、上記2点の目的を満たすためには、簡易的な決算で十分です。
必要以上に手間をかける必要はありません。
どの数字を店長に意識させたいかを軸にした日次決算を作成されることをお勧めいたします。
ここでは、エクセルを使った簡易的な日次決算の方法をご紹介します。
まずはどのような項目をエクセルに入力するのか、入力項目を見ていきます。以下は、主な入力項目です。
- 売上…1日分の売上高を入力します。
- 原価…原価の集計を正確に実施しようとすると、あまりにも手間がかかってしまいます。
ここでは、簡易的に目標原価率や理論原価率で算出する方法をお勧めします。月次で集計した際に、実際原価と目標(理論)原価との乖離にメスを入れるとよいでしょう。 - 人件費…その日のシフト実績をベースに算出します。勤務時間数×時給単価です。
より綿密に行う場合は、社会保険の対象になるスタッフとならないスタッフに分け、社会保険対象者には、簡易的に15%を社会保険料として人件費に加算します。 - 家賃…月額家賃を月間営業日数で割り、1日分の家賃として計上します。
- 水道光熱費…前日営業終わりのメーター値と、当日営業終わりのメーター値の差を記録し、㎥、kw単価を掛け、計上します。
- ロイヤリティ…加盟しているFCに支払うロイヤリティの計算方式に合わせて1日分を入力します。
例えば、売上に料率を掛ける場合は、当日の売上に料率を掛けて計上します。 - 本部経費…上記ロイヤリティと同様に1日分を入力します。
- その他固定費…年間の平均月額固定費を月間営業日数で割り、1日分の固定費として計上します。
02エクセルシートの作成方法と管理方法
では、どのようにエクセルを使っていくか具体的な方法についてみていきます。以下の図は日次決算の完成イメージです。
一見、入力に手間がかかりそうに見えますが、日々入力が必要な項目は、赤字で示している売上高、給与、社会保険、水光熱費のみです。
その他の項目については、事前設定を行いあらかじめ計算式を組み入れることで簡素化しています。
①事前設定項目
事前設定は以下のように行います。この作業は月初に1回だけ行います。
上図の右側の事前設定欄にあらかじめ数字を入力し、左側の日次決算表に反映させます。売上原価、ロイヤリティについては売上に、設定した%を掛けた計算式を設定します。家賃、その他固定費、本部経費については、営業日数割の数字を反映させます。
②毎日入力が必要な項目
・売上高 当日の売上高を入力します。
・人件費、社会保険料
こちらは、別に計算表を用意します。例えば以下のような計算表を用意し、日々の勤務時間を入力します。
ここでは、社会保険料を15%とし、簡易算出を行います。
こちらで算出された人件費合計を日次決算表に反映させます。
ただしこの方法には、時間外労働の計算が含まれていません。
変形労働時間制をとっているケースでは、1か月の所定労働時間を超えた場合、時給単価を1.25倍に設定する必要があります。
より綿密に経費算出を行いたい場合は、各スタッフの労働時間を集計し、所定労働時間を超えれば、時給単価を1.25倍に引き上げる計算式を組み込むことで対処します。
また時給単価や給与など、店舗に開示しない場合は、各列を非表示とし、ロックを掛けておきましょう。
より簡易的に行いたい場合は、前月の人件費合計÷総労働時間で平均時給単価を算出し、当日の総労働時間とかけて算出する方法もあります。
水道光熱費
こちらも別に以下のような計算表を用意して、集計します。あらかじめ各料金単価を調べておきましょう。
日々のメーターを記録して、前日との差(使用料)を出し、単価を掛け日々の料金を算出します。
こちらで算出された合計値を日次決算表に反映させます。
この方法を使えば、売上高、労働時間、水光熱のメーター値の3項目を日々入力するだけで、日次決算を行うことができます。
より綿密に行いたい場合は、あらかじめ必要な要素を、事前設定で計算式に組み込むようにし、余計な入力をしないで済むように設定しましょう。
03店長の数字の意識を高めるために重要なこと
ここまで、エクセルを使って日次決算を作成する方法をお伝えしてきました。
ここからは、これをどう店長教育に結び付けていくかという話をしていきます。
まずお伝えしておきたいのは、この仕組みを導入したからといって、すぐに店長の意識が変わり、業績が改善するかというとそうではありません。
店長の数字に対する意識を高めていくためには、3段階の仕掛けを行う必要があります。
3段階の仕掛け
①気づきを促す
②原因追及を促す
③対策を促す
①気づきを促す
導入当初、店長はこのような反応を示します。
「今日は黒字だった」、「人件費が多かった」「毎日売上に波があるな、水道光熱費にも波があるな」というような感想レベルです。
最初はこの程度で問題はありません。
まずは、集計する項目に慣れ、日々の変化に気づいてもらうことが大事です。
日報に感想コメントを記入してもらう、SVが臨店時に必ず気づいたことを聞くなど、気づきを促す仕掛けを入れます。
まずは1か月間を目安に続けましょう。
②原因追及を促す
1か月間、どのような気づきがあったかを総括します。
1か月たてば、店長のコメントも変化してきます。
「平日は赤字が多く、土日の黒字で月間の収益を確保している」
「特定の曜日の水道光熱費がなぜか高い、この日はアルバイト中心なので、出しっぱなし、つけっぱなしが発生しているかもしれない」
「平日の人件費を掛けすぎているかもしれない。土日の忙しいが、平日は割とゆとりがある」
「月次決算と比べると、原価率の実績が高い状態にある」
店長がこのような状態になれば、それがなぜ起こっているか、改善に活かすためには何を調べるべきかといった原因追及を促す仕掛けを行っていきます。
仕掛けの代表例は、店長向けワークショップです。
ワークショップは、店長会議など店長が集まる機会を活用して実施します。
ワークショップは以下の手順でおこない、1枚のシートにまとめていきます。
・1か月の気づきを抽出し、まとめる
↓
・なぜそのような状態になっているか、仮説を立ててもらう
↓
・仮説をもとに、どのようなアクションを起こすかを検討する
ワークショップでは、原因追及のための細かな数字が解らないケースが多いので、再調査をどう行うかを検討してもらいます。
また原因がはっきりしている場合は、改善策を検討してもらいましょう。
ワークシートの記入例は以下の通りです。
気づき | 平日は赤字が多い |
---|---|
なぜそのような状態に なっているのか(仮説) |
・土日に比べて売上が低い ⇒客単価は変わらないが、客数が少ない ・人件費を掛けすぎている |
アクション (再調査or改善策) |
・日々の客数・単価をシステムで調べる ・日次決算とシフト表を見比べ、削れるシフトがないかを調べる |
ワークショップを行えない場合は、SV臨店時に店長面談などで補います。
また再調査にあたって、日次決算をより詳細に集計する必要が出てくれば、日次決算表をバージョンアップしても構いません。
バージョンアップ(追加集計)例
・売上高…客数、客単価、ランチ売上、ディナー売上、商品別出数、セット率
・原価…商品別出数、セット率、在庫量、廃棄量
・人件費…正社員、PA、ランチ、ディナー、アイドル、仕込み時間、閉店作業時間
・水道光熱費…水道、電気、ガスの使用量の売上対比
ただし、あれもこれも詰め込みすぎるのはお勧めしません。
できるだけ的を絞って、余計な手間を省きましょう。
③対策を促す
より詳しい調査で、原因がある程度判明すれば、具体的な対策を検討します。
こちらも、ワークショップやSV面談にて仕掛けを行います。
ワークシートは、原因追及時に使用したワークシートを活用するとよいでしょう。
記入例は以下の通りです。ここでは再調査を行い判明したこと整理し、具体的な対策を検討します。
気づき | 平日は赤字が多い |
---|---|
なぜそのような状態に なっているのか(仮説) |
・土日に比べて売上が低い ⇒客単価は変わらないが、客数が少ない・人件費を掛けすぎている |
アクション1 (再調査or改善策) |
・日々の客数・単価をシステムで調べる ⇒平日は土日と比べて客数・単価ともに低いことが分かった・日次決算とシフト表を見比べ、削れるシフトがないかを調べる ⇒平日の仕込み時間は短縮できることが分かった(出数から考えて、土日と同じ時間をかける必要はない) |
アクション2 (対策) |
・平日単価アップのため、平日限定のセット商品を用意し、オーダー接客時に利用を促す
・平日限定紹介クーポンを作成する ・仕込み時間をシフトで調整する |
以上のような3段階の仕掛けを実施すれば、店長に数字から読み取る力、対策を施す力を伸ばすことができます。
まとめ
今回、日次決算の作成方法と活用方法についてお伝えしました。
日次決算を作成する目的は以下の2つです。
・店長の数字に対する意識を高めること
・店舗の数字を日次でチェックし、課題を見つけること
です。
そのためには、
・日次決算の作成に時間を掛けないこと、数字の正確さを求めすぎないこと
・記録するだけではなく、気づきや課題認識の場を与えること
が大切です。
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