お役立ち情報外食産業はどこに向かうか
~外食産業の歴史と、これから(その2)~
2020年09月09日
新型コロナウイルス感染症は、外食産業にあまりにも大きな影響を与えることになりました。
我が国の外食産業はこれからどこに向かうのか?
その問いの答えを探すべく、今回から、外食産業のこれまでの歴史を簡単に見ていき、これからの外食産業の進んでいく方向を考察したいと思います。
【1970年~1994年は、前回コラム「外食産業の歴史と、これから(その1)」】
1995~2008年 食への安全性
96年にはO-157が猛威をふるい、01年にはBSE問題※、さらに02年には食品の偽装や虚偽表示、無認加添加物の使用、残留農薬問題、 04年には鳥インフルエンザ発生など、食の安全性が揺らぐ出来事が立て続けに起こりました。
これらの問題もあって、外食産業は「危機管理」「食の安全」に徹底して取り組みはじめました。
※BSE問題(牛海綿状脳症)
2001年9月にBSEの疑いがある牛が発見され、10月からBSE対策事業の一環として、全頭検査前の国産牛肉買い取り事業を農林水産省が実施。
しかし、これを悪用した食肉関連企業による牛肉産地偽装事件が相次いで発覚し、大きな社会問題となりました。
BSE関連の牛肉偽装事件で相次いだ企業犯罪により、食の安全に対する国民の信頼が大きく揺らぎ、BSEそのもの以上に深刻な打撃を社会に与えることに。
吉野家が牛丼の販売を、2004年2月より2008年9月まで長期間に渡り販売中止に追い込まれました。
また、社会的な食への注意・関心の強まりの中で、有機栽培農産物などの食材利用が活発になっていきます。「食育」や「スローフード」など、新たな考え方も登場。
2008年~2019年 店舗数飽和(競争激化と人手不足・労務問題)
市場規模も24兆円になりましたが、過剰なほどの飲食店数となり、飲食店同士の競争が激化(出退店が相次ぎ「居抜き出店」が流行り出す)。
もはや、飲食店のないエリアはなく、ただ店を出すだけでは繁盛しない難しいビジネスとなりました(様々な集客方法が模索される)。
それと同時に、過剰な店舗数は、外食産業に極めて厳しい人手不足となりました。採用経費に多額のコストがかかるようになり、また人手不足は過剰労働(残業)を強いる形となり、過労による自殺や、未払い残業代の問題等、多くの労務問題が取り沙汰され、大きな社会問題へと発展しました。
飲食企業の人事分野においても、「採用」「定着化」「評価・賃金制度」「教育」に経営者の関心が高まった時代とも言えます。
2020年~ 大量閉店、個人店的複数業態化時代の到来?
2019年10月にとうとう消費税が10%に増税され、さらに弁当・総菜、テイクアウトは8%の軽減税率適用となった為、外食産業においては逆風が吹き始めました。
そして、2020年3月から新型コロナウイルス感染症による影響が出始め、とうとう緊急事態宣言や営業自粛要請が出されました。結果、多くの個人店の廃業や、チェーン店の大量閉店。営業中の店舗も、感染拡大予防から、接待、宴会需要が無くなり、またソーシャルディスタンス対応からの客席間引きなどから、コロナ前の売上高に戻すことは極めて厳しい状況が続いています(「7割の経済」とも言われる)。
とくに、今回のコロナ禍で、大きな打撃を受けた業態は、宴会主体の店、領収書利用がメインの店でしょう。
そんな業態を持つ会社でも、なんとか他の業態で‶持っている”会社はあります。これまでの歴史を振り返っても、外食産業は幾度となく何年かに1度は危機が訪れています。
これからも「何年後かには、また何かしら必ず来る」ことを前提に商売していく必要があります。
つまり、今後は「会社トータルで何とかなった(他の業態が大丈夫だった)」という考え方が大事になるでしょう。
また、仕事柄、多くの飲食店経営者や幹部の方から「飲食店の生き残り策は、どういったものですか?」といったお声を多く頂戴します。
もちろん、ウェブマーケティングや、新業態転換などテクニカル的なものも存在しますが、やはり本質的には、常連客に愛される、あのお店に一度行ってみたいと思われる「美味しい」お店になることです。
飲食店である以上、その本質が今、まさに問われている形です。
実際、コロナ禍においても人気店で当分先まで予約の取れない店はあります。
そして、その多くが個人店であるわけです。私は「隠れた名店戦略」と名づけています。
チェーン店の時代から、個人店の時代に大きくシフトチェンジしていく、そんな時代になっていくでしょう。