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飲食店の評価ノウハウ店舗規模別人事評価ノウハウ

店舗規模別人事評価ノウハウ

自社の規模に合った人事評価制度のあり方がわかる!
「規模別 人事評価ノウハウ」の紹介

一口に飲食店の人事評価制度といっても、店舗数や店長の力量によって、使いやすい評価制度の形は様々です。今回は、店舗数という切り口で、フィットする評価制度についてお伝えします。

下記のような方におススメのノウハウです。

  • 店舗数の拡大は考えておらず、今いる社員をきちんと評価したい

  • 最近、店舗数が急拡大し以前使っていた評価制度が使いづらくなってきた

  • 本社機能が拡大してきており、店長やSVに求める役割が変わってきた

目次CONTENTS

011~5店舗までの人事評価ノウハウ
~人事評価は必要ない?!~

1~5店舗までの飲食店の一般的な特徴としては、本社機能がない(社長がヒト・モノ・カネ・情報の管理を担っている)ことが挙げられるでしょう。

事例をお伝えすると、とある飲食店C社では、検討に検討を重ねた結果、
人事評価を実施せずに、社員の給料やボーナスを決定しています。

その理由としては、

  • 評価表を構築しても、店長はプレイングプレイヤーであり評価できる状況にない。
  • 5店舗以上の拡大は計画しておらず、今後も社長の目が届く範囲の規模が続く
  • とにかく分かりやすく、納得性があり、シンプルにしたい

といった3点が挙げられました。

とはいえ、評価をしないと公平な昇給につながりませんから、
何らかの形で評価を行わなければなりません。

そこでC社で実施しているのが、(仮称)C-1グランプリです。

C-1グランプリとは、全社員参加型の店舗対抗別に行われるグランプリのことです。
ホテルの会場を借りて大々的に実施します。その日は店舗も臨時休業をとります。

グランプリの結果によって、下記の通り毎年の昇給が変動します。

1位…各店舗の正社員が+7,000円の昇給
2位…各店舗の正社員が+5,000円の昇給
3位…各店舗の正社員が+3,000円の昇給
4位・5位…各店舗の正社員が+2,000円の昇給

毎年、種目を変えていることで、特定の店舗が1位を取り続けるといったことはなく、常に混戦状態が続いています。種目の発表は毎年の経営計画発表会時に行います。

運用時の注意点としては、4位・5位の店舗も成果を出していないわけではないので、
賞与支給の時には調整を加え(社長采配)、不公平感を取り除くようにしています。

とある年度のグランプリは下記の項目で競いました。

種目1:予算達成率・前年伸長率の達成率
種目2:ホールサービスのロールプレイング
種目3:キッチン業務の実演
種目4:当日行う自店舗プレゼン

種目1は、店舗ごとに席数や立地なども異なるため、不公平ではないかといった声も挙がりましたが、売上については昨年対比で実施しているため、C社では店舗間の不公平間はありません。

不公平が起きそうな場合(昨年の売上が悪く、昨年対比で設定すると異常値が出そう、テナントの工事による営業日の短縮など)は、特別に係数をかけて調整しています。

種目2は、S-1グランプリ(https://hanjyoten.org/)のような形式で、
ある設定に従いロールプレイングを実施し、各店舗のホールスタッフの力量を評価します。

種目3は、差がつきにくい分野ではありますが、各店舗のキッチンスタッフの実演を行い、いかにマニュアル通りに料理が作れるか?といった観点と
マニュアルを超えた新しい工夫はあるか?という2つの観点で評価を行います。

種目4は、居酒屋甲子園(http://izako.org/)のような形で、1年間で実施した自店舗での施策やお客様との感動エピソードなどを発表します。

種目1~4を経営層と役員陣で総合的に評価を行います。

グランプリのメリットは、

  • とにかく分かりやすい!
    何をすればどうなるか、が明確になり、努力のポイントが明確になります。
  • 店舗の団結力が高まる!
    グランプリが、店舗のメンバー全員で取り組むため、団結力が高まります。
  • 他店舗の取り組みを知ることができる!
    1年に1回他店舗の取り組みを知ることで、自店舗に取り入れることができ、会社全体のノウハウのレベルアップにつながります。

026店舗~10店舗までの人事評価ノウハウ
~理念とミッションで意識をまとめる~

6店舗~10店舗までの飲食店では、そろそろ本社機能を持たないと事業の運営が厳しくなってくる状況でしょう。

社長の目では見ることができない社員もチラホラと発生してきています。

店舗内では増え続ける社員をとりまとめるために、企業理念やミッションで社員の意識を取りまとめないといけないと感じる時期です。

A社の評価項目と評価のウエイト

10店舗規模のA社の事例をお伝えします。

評価項目 評価結果の処遇への反映ウエイト
給与 賞与
1 粗利益目標達成率 10% 20%
2 営業利益目標達成率
3 行動評価 40% 40%
4 店舗重点項目評価 30% 20%
5 経営方針共有 20% 20%

<店長に求めるもの>
A社が、店長に求めるのは、「経営方針を理解して、マニュアルを守った店舗運営をすること」です。飲食店の業績は、立地の問題や他社の出店など店長の力ではどうにもならない要素も大きいため、評価に対する業績のウエイト(上記1、2)比率は少なめに設定しています。
A社はかつて、「飲食店で修業し、独立したい!」という社員が多かったようですが、今は「安定して、好きな飲食店で働きたい」という方も多いことから、いかに売上をあげるかということよりも、しっかりと経営方針を実践できるかどうかを重要視しています。

<評価項目の解説>
重要視するのは、3の行動評価と4の店舗重点項目評価です。

3は、店長が自ら自分の仕事ぶりを振り返る機会をもってもらうために導入しました。項目としては、例えば「本社からの指示や助言に従い、モチベーション高くに日常業務を進めることができたか」や「店舗内のメンバーと積極的にコミュニケーションをとりながら良いムードの店舗内チームワークを実現できたか」など、意欲・マナー、チームワーク、勤務態度などの項目について、全4項目の定性項目を設定しています。定性項目の数を設定するポイントは覚えられる項目数にすること、です。

4の店舗重点項目評価は、店舗ごとに設定します。
人財の充足率やFL率、人時生産性など、各店に応じて設定した課題について評価を行います。

5の経営方針共有は、店長会議の参加数、店舗メンバーとの面談の実施数などによって、評価を行います。参加「数」だけでよいのか?という議論もありましたが、「まずは参加することが大事だ」という観点から、現時点では、「数」を重視した評価を行っています。今後も出店を行い、規模が拡大し、店長のレベルが上がってくれば、評価の項目は変わってくるかもしれません。

<成功のポイント>
10店舗規模の飲食店であれば、人事の本部機能が十分でない場合も多く、またSVも現場に入ってしまい(役割としては数店舗の管理なのですが)、日々、店長の仕事を見る時間的な余裕がない場合が多いです。

そのためA社では、3の行動評価と4の店舗重点項目評価は2か月に1回、店長が自己評価を行い、その累計(評価期間は6か月なので、年3回分)の自己評価を参考に、店長の上長が評価を行う形式をとっています。

運用しやすいルール作りが飲食店の人事評価を機能させるためのポイントです。

0320店舗以上の人事評価ノウハウ
~店長の役割を明確にする~

30店舗以上の飲食店の場合、本社機能、SV機能がきっちりと切り分けられた組織体系になっており(なっているはず)、出店計画なども綿密に行われている場合が多いでしょう。規模も大きくなってしまうため、本社が1店舗1店舗を細かく見ることができません。そのため、店長の役割がより大きくなってくるため、その役割に応じた評価を実施することが重要です。

B社の評価項目と評価のウエイト

評価項目 評価結果の処遇への反映ウエイト
給与 賞与
1 売上目標達成率 5% 10%
2 管理可能利益 10% 15%
3 重要業績項目 15% 5%
4 リーダーシップ 15% 15%
5 人財育成力 20% 20%
6 関係構築力 20% 20%
7 業務遂行力 10% 10%
8 チャレンジ目標 5% 5%

<店長に求めるもの>
B社が店長に求めているのは、「リーダーシップ」です。店舗数も増え、本部機能だけでは、どうしても経営方針を浸透させることが難しくなってきます。
そのため、各店のメンバーに方針を理解させ、目標達成に向けてチームをまとめ、引っ張っていく力を求めています。

<評価項目の解説>
1~3がいわゆる「数字」で評価される項目になりますが、全体のウエイトは30%と設定しています。店長以上の役職者、エリアマネージャーなどになると、業績評価は70%、行動評価は30%となりますが、店長の業績評価は30%、行動評価は70%と設定しています。
売り上げなどの結果は立地や本部の要因であることが多い(店長にメニュー開発などの裁量が無い)ため、業績評価は30%程度にしています。

3の重要業績項目は店舗ごとに異なりますが、主に新商品の販売数、有給の取得数などの本部通達の指標が設定されることが多いです。

店長に求めるものが「リーダーシップ」であるため、リーダーシップの項目が高くても良さそうですが、リーダーシップという能力は一朝一夕では身につきません。そのためその前段階である、5の人財育成力や6の関係構築力のウエイトを高く設定しています。

人財育成力は、「店舗社員のオペレーションレベルを向上させたか」といった定性的な評価項目もありますが、会社で設定したマスターチェックリスト(入社期間に応じて設定した習得すべきスキルの一覧)の達成率でも評価を行います。

6の「関係構築力」は、アルバイトも含めた店舗メンバーとの面談の実施、離職率などを総合的に判断しながら評価を行います。人財育成力と関係構築力が身についていけば、自然とリーダーシップを発揮できる店長が増えるだろうという意図のもとのウエイトを高めに設定しています。

参考までに、関係構築力の点数基準をご紹介します。

評価点数 評価基準 例えば
5 ・他店舗の模範になるレベル(視察実施)
・非常に優れているレベル
店長会議で決定されたことが、迅速かつ確実に実行される
良い情報も悪い情報も店長に集まってくる
4 ・信頼感がある
・要求を上回るレベル
メンバーからの相談が多数ある
関係者への返信や回答が早く的確である
3 ・ある程度信頼感がある
・要求を満たすレベル
コミュニケーションに不足はない
店長会議を確実に実施している
2 ・信頼感を得られていないことがある
・最低限レベル
伝えただけ、になっていることがある
人のせい(他責)にすることがある
1 ・不信感を持たれている
・不満に感じている
社会人としてのビジネスマナーに不安がある
問い合わせなどの返信スピードが遅い

7の業務遂行力は、店長に必要な要素であるヒト・モノ・カネ・情報の管理がしっかりとできているか?という観点から評価を行います。

8のチャレンジ目標は、全体のウエイトとしては低く設定しています。これは、主に自己啓発的な内容を目標設定しています。店舗数も多いため、目標設定のすり合わせなどは十分に行えていませんが、良い意味での”ゆるさ”を残しつつ、運用しています。

<成功のポイント>
B社はこの3年間で100店舗出店を目指しています。現在は50社のため、単純計算であと50名の店長が必要になり、それを管理するエリアマネージャーも輩出していかなければなりません。そのため、人財の育成に主眼を置いた評価項目となっています。

現状の出来ていない部分をより伸ばしていく、という観点も必要ですが、会社が今後向かう方向に合わせた評価表をつくることが飲食店の人事評価を機能させるためのポイントです。

D社の事例

もう1つ30店舗以上の事例をお伝えします。D社はこれまで、業績成果と行動の2本立てで評価を行ってきましたが、定性評価が良いのに、業績が悪い。定性評価を活かした人財育成ができない、といった課題がありました。

もちろん、人事評価だけの問題ではなく、D社で働くエリアマネージャーの力量や本部のサポートが不足していたということも挙げられます。
しかし、業績評価と定性評価のミスマッチが続く中で、「いっそのこと定性評価は無くて良いのではないか?」「評価の調整も時間がかかる割に、効果があるのか?」という声が社内で強くなり、業績評価一本での評価を実施することになりました。

ただ、業績評価というものはどこまでいっても不公平です。10店舗程度であれば、まだ正確な予算が立てられますが、100店舗規模になると難しくなります。また、昨年対比の指標も、たまたま昨年が良かった、他店舗が近隣に出店してきたなど店舗によっても難易度が異なります。

D社ではこういった不公平感を理解したうえで、業績評価のみで評価を実施しようという結論にいたりました。ただし、反映するのは、賞与のみです。給与の昇給は会社業績に応じて、一律で昇給させる形式をとりました。

D社の評価項目と評価のウエイト

評価項目 評価結果の処遇への反映ウエイト
給与 賞与
1 売上目標達成率 0% 15%
2 売上昨年対比 20%
3 粗利益目標達成率 10%
4 粗利益昨年対比 20%
5 Fコスト目標差異 15%
6 Lコスト目標差異 15%
7 覆面調査点数 5%

D社では、業績評価1本に絞った評価に切り替えると同時に、意識から飛んでしまいがちな人財育成に対する対策を強化しています。
店長に対して店舗メンバーへの面談方法の研修や離職を防止するための店舗づくりの研修など、様々なテーマでのサポートを強化しています。

業績評価1本に絞りましたが、店長からの評価は悪くなく、「数字で評価されるのは分かりやすい」「賞与だけの反映なので、理解できる。給与は毎年上げてもらえるので、安心して働くことができる」「数字をあげるためには、スタッフ教育が必要なので、結果として今までよりもスタッフ教育に力を注ぐようになった」といった声をいただいています。

D社では現在のところ、うまく運用できていますが数年後には、「定性評価での評価も必要だ」といった意見が上がるかもしれません。自社の組織風土や成長ステージに応じた評価制度を行うことが飲食店の人事評価を適切に機能させるポイントです。

E社の事例

E社では精力的に人材育成を行っており、評価制度についても7年近く運用を行ってきたタイミングで、評価をMBO(目標管理制度)に切り替えを行いました。

一般的に、MBOは難易度が高く、うまくいっている企業は少ない(筆者経験)のですが、E社の場合、長年の評価制度の運用により、評価者も育ってきており、今回MBOの導入を決定しました。

E社の評価項目と評価のウエイト

評価項目 評価結果の処遇への反映ウエイト
給与 賞与
1 MBO(売上利益項目①) 100% 100%
2 MBO(売上利益項目②)
3 MBO(売上利益項目③)
4 MBO(人材育成項目①)
5 MBO(人材育成項目②)

とはいえ、いきなりMBOを導入したとしても現場では、「どんな目標を立てれば良いか分からない」「目標の設定レベルが難しい」といった声が挙がることが予期されたため、自由な目標を立てて良いという立て付けにはしませんでした。具体的には下記のような制限を設けました。

①経営方針―店舗方針から落とし込んだ個人目標とすること
MBOの理屈としては、経営方針から店舗方針に落とし込み、個人目標を設定します(上から下)。そして個人目標が達成できれば、結果として経営方針が達成できる(下から上)という理屈です。

会社によっては、経営方針を掲げずにMBOを進める場合もありますが、E社の場合は本来のMBO通りの運用を行っています。しかし、一般社員の中には、店舗方針から個人目標に落とし込むことが難しい場合もあるので、目標設定事例集(どんな目標を立てれば良いか分かりやすく書いているガイドブックのようなもの)を用意し、スムーズな運用を実現しています。

②MBOの目標設定数は5つとすること。そして5つのうち3つは売上利益項目、2つは人材育成項目とすること
目標は、制限しないと際限なく増えていく傾向があります。そこで、E社では5つの項目を設定してもらうようにしています。ウエイトなどを設定し、5つでなくても運用できる制度も検討しましたが、ウエイトの設定方法が難しいという声もあり、5つで設定しています。また、5つの目標種類も3つは売上・利益、2つは人材育成項目 と目標の種類についても制限を設けています。

E社では、これまでの運用経験と評価者教育によって、MBOはうまく機能しています。また、今回のようなコロナウイルス禍においても、柔軟に目標設定を変更することで対応することができています。(SNS活用、宅配対応など)

まとめ

人事評価を作成するには、最低でも3か月~半年程度かかります。

人事評価を入れずとも、社員のモチベーションを高めて、なおかつ仕事の成果もきちんと評価する方法もありますので、自社の規模に合わせて人事評価の導入を検討してください。

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