飲食店の評価ノウハウ店長の人事評価観点ノウハウ
飲食店において、一番重要なポジションが「店長」です。肩書が同じ店長でも実力のあるS級店長とそうでない店長では売上だけでなく、アルバイト・パートの定着にも影響を及ぼします。
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店長の評価が業績評価のみとなっており、モチベーションが低い
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店長に何を求めるか明確になっておらず、一般社員とあまり変わらない項目となっている
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会社の目指す部分と店長の評価項目がリンクしていない
店長の評価項目を整備することで、店長自身に会社が何を求めているかを伝えることができ、人材育成ツールにもなります。本ノウハウでは、店長の人事評価観点についてお伝えします。
目次CONTENTS
01店長に何をしてほしいか決める
皆さんの会社では店長の仕事とは何か、明確に示せているでしょうか?
店長研修や、店長会議の中のミニ研修などで、店長の仕事を体系的にかつ図として示すことができれば会社としてのあるべき姿を示すことができます。
店長の評価項目を作成する際に、最初に作るべきなのは、店長に何を求めるかです。売り上げを求めるのか、現場の管理を求めるのか、またはその両方か。店長に対して求めるべき内容が固まれば、評価項目は自ずと決まってきます。
よくある事例としては、店長に求めたい内容と評価項目がリンクしていないことです。例えば、店長に求めるのは「経営理念の体現だ」としたときに、評価項目としては経営理念を具体化(おおざっぱな内容を分かりやすくする)したものが評価項目となります。
しかし、実際に評価しているのは売上や利益といった数値項目だけだとしたら、求めていきたい経営理念の部分とはギャップがあります。
このように、会社が求めたい内容と評価項目は一致させることが店長の評価項目を成功に導くポイントです。
02業績評価項目例
ここからは、具体的に評価項目を見ていきますが、まずは業績評価、つまり数字の部分の評価についてお伝えしていきます。
絶対値・前年比・予算比で測る
まずは、出てきた数字に対してどんな尺度で評価するかです。測る方法としては、主に3つあります。
- 絶対値
絶対値というのは、何円売り上げたら〇点 というように事前に点数に対する結果を決めておく方法です。対前年比や対予算比とは違い、原則として毎年数字は変わらないので評価の運用としては分かりやすく、評価される側からしても分かりやすい指標となります。ただし、事前の設定指標が難しいのが欠点です。例えば、FL率などであれば、毎月大きな変動はないため設定しやすいと思いますが、売上や利益については、毎期の経営計画と連動するものですので、絶対値だと評価がしづらくなります。 - 前年比
前年比は、前年の同期間と比較して伸びたか/伸びしていないか という観点で評価を行います。前年比という測り方は分かりやすく、とりあえず昨年から伸びたのか・伸びていないのか、一目でわかります(勝ち負けが分かる)ので、評価される本人からしても納得度が高い測り方です。ただし、評価点数のつけ方によっては不満が大きくなる場合があります。例えば、10点満点で5点の位置が前年比100%達成だとすると、前年の数値をクリアしない限り半分の点数となります。この前年の数値というのが厄介です。仮に、テレビなどで取り上げられ前年の売り上げがかなり良い場合、その次の年には同じ売り上げを達成することは難しい場合もあります。また、昨年オープンした店舗については、前年比で行ってしまうと、著しく高い評価点数となってしまう場合があります。そのため、前年比を採用する場合は、1前年比が良い場合2前年オープン店舗 についての取り決めをしたうえで、使用するようにしてください。 - 予算比
予算比は、多くの会社が採用している評価指標でしょう。予算の納得度にもよりますが適正な評価指標として受け入れられます。ただし、この予算の納得度というところが厄介です。経営計画から落とし込んだものが予算となりますが、経営計画を社員に公開や説明していない場合、本人の納得度は低くなってしまうため、予算比を使う場合は、計画の浸透が必要です。
店長がコントロール可能な項目で評価する
お伝えしたように、出てきた数値に対する尺度の次は、具体的に何を決めていくかを検討します(先に項目を決めてから尺度を決めたほうが良いと思います)。ポイントは、店長がコントロール可能な項目で評価することです。例えば、「営業利益」という指標にした場合、家賃や広告費(本部経費を負担する場合)などは店長ではどうしようもない項目が入ってきてしまいます。
そのため、利益を算出する場合は、店長が管理可能な項目(食材費、人件費、エネルギー(電気水道ガス))のみを差し引いた数値にしてください。
会社が達成したい項目を評価に落とし込む
売り上げや利益といった指標だけでなく、会社が達成したい項目を評価に落とし込むことも一案です。例えば、生産性を向上させたい、といった目標がある場合は、人時生産性(1時間当たりの売上高)や1人あたり売上高(1人がどれだけの売上を上げたか)といった項目も有用でしょう。人手不足に悩む場合は、離職率、新規採用率、人員充足率といった指標も使えると思います。業績評価というと、売上や利益に目が行きがちですが、このような項目も検討してみて頂ければと思います。
業績評価を行わない場合もある
しかし、同時に店舗の売上は商品・立地に大きく左右されることも事実で、売上が高い店舗の店長が、売上の低い店舗に異動した場合、同じように活躍できるかというとそうはならないと思います。業績評価の有無については、評価制度を構築する際にはいつも議論になる部分ではありますが、筆者自身の経験としては、業績評価は行う、企業が多くなっています。
03行動評価項目例
店長の評価は数字だけではなく、行動の部分も評価を行ったほうが良いでしょう。行動を評価する観点は3つあります。
理念を具体化した項目例
自社が経営理念の浸透を推進している場合、経営理念をさらに具体化して、行動項目として使用することもできるでしょう。例えば、「ラーメンの提供を通じて、世界中の人を笑顔にする」という経営理念を掲げている企業の場合は、
- Q.ラーメンの提供とあるが、どんな状態で提供することが良いのだろうか?
⇒ レシピ通りに提供しないといけないね
⇒ 熱いものは熱く、冷たいものは冷たく提供できるかは基本だよね
⇒ 調理だけでなく、提供スピードも大事じゃないか? - Q.世界中の人を笑顔にするにはどうすれば良いのか?
⇒ まずは、自分たちが笑顔にならないといけないね
⇒ どんな時に笑顔になるかな?
⇒ 大きな声を出してきてよかったと思える接客なら笑顔になるかな?
といった話を評価項目検討メンバーで行います。話し合った内容をまとめていけば、理念とリンクした評価項目を作成することができます。
ただし、本当に理念を浸透させるのであれば、評価項目にしただけでは、浸透はしませんので、評価項目にすると同時に、別の施策【参考「失敗させない!飲食業のクレド経営ノウハウ」】も検討を進めてください。
QSC項目例
QSC項目は定番項目の1つです。
- Q…クオリティ
商品提供のクオリティはどうだったか?を主に評価します。 - S…サービス
提供サービスがどうだったかを評価します。ただし、フードコート業態、決済の機械化などによりお客様との接点が減っている傾向にありますので、本当に必要な項目かどうかは検討が必要です。 - C…クレンリネス
店舗は綺麗に保たれていたか?を評価します。
QSC項目については、個別に見ると大変なので、「QSC項目」と1まとめにして評価する企業もあります。
人材育成項目例
ここまで店長の職務遂行に関する評価項目をご紹介してきましたが、店長に必要な重要な項目として、人材育成や店舗内のチームワーク強化があります。こういった内容についても評価をすることで、店長により意識を強めてもらうことができます。
項目例
0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | |
---|---|---|---|---|---|
部下育成 | 部下育成に取り組む姿勢が見られなかった | 部下育成について取り組んでいたが結果としては出なかった | 概ね問題が無かった | 次期店長候補の育成を行うことができた | 他店から模範になる人材育成の取り組みを行っていた |
チームワーク | チームワークを強化しようとする姿勢が見られなかった | 店舗メンバーから信頼を得られていなかった | 概ね問題が無かった | チームワークを良くする取り組みを積極的に行っていた | 店舗メンバー内のチームワークが強く、定着率も良かった |
部下育成 | |
---|---|
0点 | 部下育成に取り組む姿勢が見られなかった |
1点 | 部下育成について取り組んでいたが結果としては出なかった |
2点 | 概ね問題が無かった |
3点 | 次期店長候補の育成を行うことができた |
4点 | 他店から模範になる人材育成の取り組みを行っていた |
チームワーク | |
0点 | チームワークを強化しようとする姿勢が見られなかった |
1点 | 店舗メンバーから信頼を得られていなかった |
2点 | 概ね問題が無かった |
3点 | チームワークを良くする取り組みを積極的に行っていた |
4点 | 店舗メンバー内のチームワークが強く、定着率も良かった |
ここまで、店長の評価項目のつくりかたについてお伝えしてまいりました。気を付けて頂きたいのは、ここで評価項目を設定したからと言ってすぐに店長に求める役割が浸透するわけではありません。評価は多くて年4回(3ヶ月に1回)、通常は年2回(半年に1回)しか行われません。
つまり多くの企業では年2回しか、評価項目を意識するタイミングが無いのです。(かといって、年4回評価するのは大変です)
評価だけに頼らず、人事制度とは別の領域になりますが、1on1ミーティングや日々の面談を通じて店長が育つ環境づくりに取り組んでみてください。
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